Highlights 2024
近年、世界各国でプラグインハイブリッド車(PHEV)、燃料電池自動車(FCEV)、電気自動車(BEV)などの各種xEVへの移行が進んでいます。EVはガソリンではなく電気を使用するため走行中の温室効果ガスや有害な排気ガスを大幅に削減し、カーボンニュートラルの実現に大きく貢献する地球に優しいサステナブルな存在です。
ダイセルグループとしてもサステナブルなxEVの普及に貢献するため、高圧コネクタ、パワーモジュール、DCDCコンバーター向けエンプラや ONE TIME ENERGY®※1 を活用した電流遮断器、蓄電送電システム、車載ディスプレイ用の機能フィルムなど、多岐にわたる製品を提供してきました。
これまでは、会社単位や各SBU※2の個別のアプローチにとどまり、xEV全体に対するダイセルグループとしての全体最適な製品やサービスの提供は不十分な状況でした。
※1 エアバッグなどに使用される、瞬時に動力を生み出す技術
※2 Strategic Business Unit の略でダイセルにおける事業部を指す
今後ますます存在感が増すxEV市場に対し、これまで各SBUやグループ会社が蓄積してきたノウハウや顧客との信頼関係性を活かしグループとしての総合的なソリューションを提供するために「xEVタスクフォース」が発足しました。このタスクフォースは、xEV市場に対してダイセルグループとしての全体最適な製品やサービスを提供するとともに、顧客との価値共創により新たなビジネスの機会を創出することで「顧客から選ばれるグループ」になることを目指すものです。
EVは駆動部分がエンジンからモーターに変わるため、高耐熱素材の需要が減り、むしろ電子部品、システムに対する最適な温度の維持や管理(サーマルマネジメント)という新たなニーズへの対応が必要です。また、EVのバッテリーは高電圧のものが搭載されており、交通事故や故障時の乗員への感電防止、二次災害対策も必要となってきています。
xEV、特にBEVにおいて車両の熱をコントロールする「サーマルマネジメント」は、燃費やバッテリーの性能、耐久性への影響が大きいため非常に重要視されています。BEVではサーマルマネジメントにより、バッテリー周りの温度が100℃以下となるため、ガソリン車で使用されたナイロンなどの高耐熱素材から、POMや長繊維PP(ポリプロピレン)などへの代替が可能です。金属やPPSの代わりにPOMや長繊維PPを使用することで、プロダクトカーボンフットプリントの低減や成形時のエネルギーの削減にもつながります。
EVに搭載する高電圧なバッテリーに対しては、ダイセルのセイフティSBUが持つONE TIME ENERGYの高い技術力を活かした「電流遮断器」により、安全かつ瞬時に高電圧、大電流を遮断することが可能です。さらにダイセルのスマートSBUでは、EVモーターの絶縁体やパワー半導体を集積したパワーモジュールといった部品の保護材を提供しています。
このようなダイセルグループの力を結集して、xEV市場においても安心、安全で高機能な製品を包括的に提供することでxEV市場の更なる発展に貢献します。
世界におけるxEVの販売台数は2021年では約1,000万台だったのに対し、2035年には約8,000万台と8倍近くになると想定されていますが、その歴史はまだ始まったばかりです。今後も充電環境の不足や充電時間の長さなど新しい課題も生まれてくると考えられます。より多くのxEVを普及させるには、新たな課題に対するソリューションも必要です。
将来的には、グループやSBUの垣根を越えて新たな樹脂の開発に取り組むとともに、外部の研究開発チームとの協業も視野に入れ、xEV市場に向けた新たな価値の創造を進めていく予定です。
今後当社は、ダイセルグループの強みを結集しxEV市場に向けた包括的なソリューションを提供するとともに、新しい価値を創出することで持続可能な社会の実現に貢献します。