2023年度は、3年続いた新型コロナウイルス感染症の影響がようやく落ち着き、世界中で人の流れが戻り経済が正常化に向けて動き始めました。一方でコロナ禍の物流の混乱に伴う需給のひっ迫に備えて、部品メーカーが多くの在庫を積み上げたため、その在庫解消に時間を要しエンプラの市場環境としては厳しい年になりました。
地球環境に目を向けると、2023年は地球表面の平均気温が産業革命以前に比べ1.4℃高くなり、過去最高を記録しました(世界気象機関〈WMO〉が発表)。確実に進む地球温暖化へのアクションとして、各国が一段と強化された環境政策や規制を次々と発表しました。当社も、2030年GHG総排出量50%削減(2018年比:ダイセルグループ)に向けた取り組みに加え、包括的な環境ソリューション創出をこれまで以上に危機感をもって進めていきます。
包括的な環境ソリューション創出に向けて、まず再生可能原料使用へのシフトを開始しました。2021年度にバイオマス原料由来のPOM(bG-POM)の生産を開始しましたが、その販売インフラを強化すべく、2023年度はグループ全体でのサステナビリティ認証の取得を進めました。マスバランス方式を活用しながらエンプラの原料を再生可能原料に切り替えていくことで、先鋭的に環境素材ニーズが高まっているエレクトロニクス部品、医療分野などへの販売の土台を固めていきます。
次に、リコンパウンディングビジネスをスタートさせ、リサイクル事業へ参入しました。この分野で蓄積した技術を活用し、欧州ELV指令(2030年度に25%のリサイクル材を使用する)に応じたPCR材の活用を進めていく予定です。
今後はダイセルグループの力を結集して、すべてのエンプラ原料のバイオマス化を図るとともに、メカニカルリサイクル、ケミカルリサイクル、エネルギー回収、炭素の原料化を組み合わせ、すべてのエンプラを対象に循環型スキームを構築していきます。
当社がこれから先もエンプラのリーディングカンパニーであるためには、安全、品質、コンプライアンスというサステナブル経営の土台を強化するとともに、カーボンニュートラル、循環型社会の実現に貢献する企業でなければなりません。
品質、コスト、調達、新規技術開発など、課題は山積みですが、ダイセルグループという会社の枠を超えた同業他社との事業連携やサプライチェーン一体化(クロスバリューチェーン)の力:「共創による革新的かつサステナブルなソリューション」で一歩一歩乗り越えていきます。
当社は「エンジニアリングプラスチックスの無限の可能性を追求し、才能豊かな魅力あふれる人財の創出と、Innovationによる豊かな未来社会の形成に貢献する」を経営理念に掲げています。すべてのステークホルダーの皆様とともに、この経営理念を実践していくことを改めて誓いたいと思います。
エンプラは、高速大容量通信ネットワーク、CASE、先進的ロボット分野などの持続可能な未来社会を支える次世代テクノロジーの発展に必要不可欠な素材です。だからこそ、私たちは未来から課せられる高いハードルを乗り越え、エンプラのリーディングカンパニーとして進化し続けます。
ポリプラスチックス株式会社
代表取締役社長宮本 仰