これまで当社テクニカルソリューションセンター(TSC)でお客様の成形支援を行う場合、高いスキルを有する成形技能士が単純な数値情報に加えて音や振動、臭いといった成形機から得られる官能情報を頼りに異常を判断していました。
しかしこのような高いスキルは長年の経験により培われるため、高度な技術を要する成形支援案件では対応できる人財が限られ、高品質な成形支援を効率良く行うという点で課題を有していました。
このような課題解決に向けて、TSCではAIによる「成形スマート化技術」の導入に踏み切りました。この技術は、15種類のセンサーを用いて、成形機から発せられる官能情報を学習したAIが、成形機の音や振動、臭いから異常を判断し、成形条件に瞬時に補正をかけるものです。
この技術を用いることで、経験の浅い若手の成形技能士でもより安定的な成形が可能になるため、お客様に高品質かつ効率的な成形支援を提供できるようになるとともに、成形不具合に迅速に対応できるため、不良品の削減にも繋がります。
今後はTSC内での成形支援のみならず、お客様の成形加工過程への技術展開も予定しており、更なる高品質なエンプラソリューションの提供を目指します。
今回導入した成形スマート化技術の中には、WEB上で成形シミュレーションができるシステムも含まれています。実際の成形機では9時間かけて3材料程度の成形しかできないところ、成形シミュレーションでは1材料15~30分で成形体験をすることが可能です。また、怪我の心配がなく、どこでも成形の学習ができることから、将来の担い手の育成が進み、人手不足の解消にも繋がると期待されます。
お客様製品の小型化や軽量化による燃費向上および省エネ化は、当社にとっても重要な課題の一つです。金属部品の樹脂への切り替えに伴い、引き続き金属である部分と樹脂化された部分との接合が重要になってきていますが、当社ではその接合技術として金属密着技術※を提供しています。
2023年度、これまでの金属接着技術に加え、新たなレーザー金属密着技術を開発しました。この新技術は高い気密性を発揮できると同時に、これまでのレーザーを用いた金属密着技術と比べて金属を処理する深度が浅い点が特徴です。従来の技術では、電子デバイスのコネクタなどの薄い部品に加工を施すとレーザー処理の深さによって金属が変形したり、穴が開いたりすることがありました。しかし、新たな技術は処理が浅いため、薄肉の金属も処理することができ、幅広い分野の部品の小型化および軽量化が進むと期待されています。
※金属の表面にレーザーや化学薬品で凹凸を付けることで金属と樹脂を一体化させる技術
また、新しい金属密着技術で接合した部品は、ヒートショックを複数回加えても気密性が低下しないことから、製品の長寿命化、ひいては廃棄物の削減も可能です。 このように当社は新たなソリューションの提供を通して、サステナブルな商品開発を支えていきます。
お客様を24時間365日サポートするため、無料の会員制オンラインテクニカルサポート「WEB@TSC®」を開設しています。詳細な物性情報などのさまざまな技術情報を提供するほか、製品に関するお問い合わせ、安全や輸出に関する各種証明書発行などにも丁寧に対応しています。WEB上でどなたでも気軽に受けられる本サービスは、お客様からご好評をいただいています。
当社のサポートに対し、お客様から賞をいただきました。