エンプラ事業
Back Number 2023

サステナブルな製品の開発

バイオマス由来のキーモノマーを活用したLCP

SDGs 12SDGs 13

近年、製品のバイオマス化へのニーズがますます高まっています。当社は2021年度にバイオマス由来の素材を活用したbG-POMの製造を開始しましたが、今年度はバイオマス由来の素材を活用した製品第二弾としてLCPをご紹介します。

キーモノマーの1つをバイオマス由来の素材に

LCPは、タブレット端末やスマートフォンなど、小型化が進む最新IT機器の超小型精密コネクタに多く利用されています。この度、LCPの原料となるキーモノマーの1つをバイオマス由来の素材に切り替えることが可能となりました。
これは、当該モノマーを製造する当社グループ会社にて循環型原料のサステナビリティ認証を取得したことによるものです。今後はバイオマス由来の原料を含むサステナブルな原料を使用したLCPの販売を予定しています。

figure 当社のリコンパウンディング・サービスのイメージ

循環型社会への貢献

バイオマス由来の素材を用いると、植物が大気から吸収していたCO2と製品を廃棄する際に出るCO2排出量が相殺されるため、実質的に大気中のCO2増加を抑えることが可能です。バイオマス由来の素材の積極的な活用は、循環型社会の実現に大きく貢献します。

figure 循環型社会への貢献

また、当社ではLCPの製造工程においてもさらに省エネに貢献する設備を導入していく予定で、カーボンフットプリントという観点からも環境に優しいLCPを目指しています。

さらにサステナブルに

近年では、5Gなどの次世代高速・大容量通信を支える基板材料としてもLCPの用途は広がってきています。当社はこうした将来のニーズに応えていくとともに、ダイセルグループの力を結集し、他のモノマーもバイオマス由来のものにし「100%バイオマス由来のLAPEROS® LCP」の販売を目指しています。

当社は 、LCPだけでなく、当社のすべてのエンプラを環境に配慮したもの(製造時のGHG削減、バイオマス化、リサイクル対応など)にし、エンプラのリーディングカンパニーとして持続可能な社会の実現を推し進める包括的な環境ソリューションを提供していきます。

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エラストマーレスPPSを開発

SDGs 12

PPSは耐熱性や耐薬品性に優れており、自動車のエンジン周辺部品やPHEV/EVの電装部品、スマートフォンなどの部品に採用されています。近年、部品の小型化・軽量化の要求を満たすため、樹脂と金属を一体成形する方法が主流となってきていますが、当該成形の場合、金属部と樹脂部の線膨張率の違いによって温度変化時に樹脂が割れる可能性があるため、樹脂にはそれを防ぐ高い耐ヒートショック性(以下「耐HS性」)が求められていました。
従来、耐HS性を発揮するためには、PPSにエラストマーを添加剤として加えることが一般的でした。しかし、樹脂成形時にエラストマーにより発生するガスが、充填不良や成形品焼け、モールドデポジットなどのさまざまな不具合を引き起こしてしまうことが課題になっていました。
この課題を解決すべく、当社はエラストマーを用いず耐HS性を実現できる新PPSグレード(1140HS6)を開発しました。これにより成形時のエラストマー由来のガス発生が低減され、モールドデポジットや成形不良の削減につながります。また、再成形時にもガス発生の心配がないため、お客様の工程内でのリサイクルをより容易にすることができます。

※射出成形時に金型表面や隙間、パーティングラインなどに付着する堆積物

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エラストマーが含まれている樹脂の場合、リサイクルによる再成形時にも再度ガスが発生する可能性がありますが、1140HS6は再成形時にガスが発生する心配がありません。このため、リサイクル樹脂の成形性や品質に対する不安が解消され、お客様の工程内でのリサイクルをより容易にすることができます。これにより、更なる環境負荷低減効果が期待できます。

エラストマーレス樹脂の開発は、今後ますます強まるお客様のリサイクルニーズに応える、画期的なエンプラソリューションです。当社は今後も、機能性と環境性を両立した高付加価値な樹脂開発に取り組みます。

更なる医療の発展に貢献 医療用POM DURACON® PMシリーズ

SDGs 3

医療・ヘルスケア市場では、信頼性の高いサプライヤーによる高品質な材料が求められます。当社は、これまで高純度のTOPAS® COC材料を長年医療・ヘルスケア市場に提供してきましたが、2023年度より新たに医療用POM(DURACON® PMシリーズ)を事業化し、医療業界におけるエンプラのニーズにより広く応えられる体制を整えました。
POMは摺動性やバネ性、耐薬品性に優れていることから、PMシリーズもその特性を活かしてインシュリンペンのダイヤル、吸入式インヘラー、医療用クリップなどに用いることができます。このような医療用材料にPOMが使用されることで、硝子や金属などの従来材料と比較して大量生産が容易になるとともに低コスト化が実現できるため、現代病ともいえる糖尿病患者の増加や新型コロナウイルス感染症などの呼吸器疾患の増加という近年の社会課題に対して貢献できると考えられています。

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医療用POMは工程変更をしないこと、安定供給を継続することなど通常のPOMよりも厳しい供給条件が求められます。また、各国の法規制はもちろんのこと、業界の厳しい品質要求水準を満たすことも求められ、これまでの当社グレードをはるかに上回る品質管理が必要です。そのため品質保証部門、研究開発部門、生産部門、営業部門、コーポレート部門、製造拠点であるマレーシアのクアンタン工場が一丸となって、要求に応えられる生産および供給体制を整えました。
特にクアンタン工場では、2016年度にPMシリーズを生産するための作業標準書や管理基準を作成して客先要求に適合する生産体制を整えるとともに、一連の製造工程における製品への異物混入対策の強化、倉庫を含めた害虫管理の徹底も進めてきました。その結果PMシリーズは、世界でも品質規格が厳しいとされる欧米の医療機器メーカーが求める主要な規制に適合しています。
今後は投薬器具に加え、カテーテル、手術用器具部品など医療用POMの用途を着実に広げ、より一層世界の医療に貢献し、人々の健康で豊かな暮らしを支えていきます。

サステナブルな技術開発・技術支援

高品質かつ効率的な成形支援を支える成形スマート化技術

SDGs 8SDGs 12

これまで当社テクニカルソリューションセンター(TSC)でお客様の成形支援を行う場合、高いスキルを有する成形技能士が単純な数値情報に加えて音や振動、臭いといった成形機から得られる官能情報を頼りに異常を判断していました。
しかしこのような高いスキルは長年の経験により培われるため、高度な技術を要する成形支援案件では対応できる人財が限られ、高品質な成形支援を効率良く行うという点で課題を有していました。
このような課題解決に向けて、TSCではAIによる「成形スマート化技術」の導入に踏み切りました。この技術は、15種類のセンサーを用いて、成形機から発せられる官能情報を学習したAIが、成形機の音や振動、臭いから異常を判断し、成形条件に瞬時に補正をかけるものです。
この技術を用いることで、経験の浅い若手の成形技能士でもより安定的な成形が可能になるため、お客様に高品質かつ効率的な成形支援を提供できるようになるとともに、成形不具合に迅速に対応できるため、不良品の削減にも繋がります。
今後はTSC内での成形支援のみならず、お客様の成形加工過程への技術展開も予定しており、更なる高品質なエンプラソリューションの提供を目指します。

高品質かつ効率的な成形支援を支える成形スマート化技術高品質かつ効率的な成形支援を支える成形スマート化技術

今回導入した成形スマート化技術の中には、WEB上で成形シミュレーションができるシステムも含まれています。実際の成形機では9時間かけて3材料程度の成形しかできないところ、成形シミュレーションでは1材料15~30分で成形体験をすることが可能です。また、怪我の心配がなく、どこでも成形の学習ができることから、将来の担い手の育成が進み、人手不足の解消にも繋がると期待されます。

製品の小型化・軽量化を加速する新たな金属密着技術

SDGs 7SDGs 12

お客様製品の小型化や軽量化による燃費向上および省エネ化は、当社にとっても重要な課題の一つです。金属部品の樹脂への切り替えに伴い、引き続き金属である部分と樹脂化された部分との接合が重要になってきていますが、当社ではその接合技術として金属密着技術を提供しています。
2023年度、これまでの金属接着技術に加え、新たなレーザー金属密着技術を開発しました。この新技術は高い気密性を発揮できると同時に、これまでのレーザーを用いた金属密着技術と比べて金属を処理する深度が浅い点が特徴です。従来の技術では、電子デバイスのコネクタなどの薄い部品に加工を施すとレーザー処理の深さによって金属が変形したり、穴が開いたりすることがありました。しかし、新たな技術は処理が浅いため、薄肉の金属も処理することができ、幅広い分野の部品の小型化および軽量化が進むと期待されています。

※金属の表面にレーザーや化学薬品で凹凸を付けることで金属と樹脂を一体化させる技術

製品の小型化・軽量化を加速する新たな金属密着技術製品の小型化・軽量化を加速する新たな金属密着技術

また、新しい金属密着技術で接合した部品は、ヒートショックを複数回加えても気密性が低下しないことから、製品の長寿命化、ひいては廃棄物の削減も可能です。 このように当社は新たなソリューションの提供を通して、サステナブルな商品開発を支えていきます。

お客様を支える技術サポート

オンラインサポートでお客様の製品開発をフォロー

お客様を24時間365日サポートするため、無料の会員制オンラインテクニカルサポート「WEB@TSC®」を開設しています。詳細な物性情報などのさまざまな技術情報を提供するほか、製品に関するお問い合わせ、安全や輸出に関する各種証明書発行などにも丁寧に対応しています。WEB上でどなたでも気軽に受けられる本サービスは、お客様からご好評をいただいています。

当社の環境技術支援お客様を支える技術サポート

Client Voice

  • WEB上で環境負荷物質調査などが充実しており他材料メーカーより優れていると感じます。
  • WEB上で物性検索がしやすく、かつ見やすいのでよく利用しています。
  • 材料ごとのさまざまな評価結果や知見が充実しており、材料の信頼性も高いため安心して利用しています。
  • 商品の提供だけでなく、業界動向情報も提供いただき大変感謝しています。
  • 常に迅速かつ親身にご対応をしていただき非常に感謝しています。
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お客様からいただいた表彰

当社のサポートに対し、お客様から賞をいただきました。

iconShiroki Automotive India Pvt. Ltd. 様
高品質な材料の提供に加え、市場需要が想定以上に高まった時期においても希望納期にお応えしたことが高く評価され、感謝賞をいただきました。
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