環境・安全
2023年度 環境負荷低減活動

環境に配慮したLCPポリマー新プラントの建設

SDGs 3SDGs 12SDGs 13

LCPは、次世代高速通信技術の発展のために欠かせない素材です。そのため当社は2024年に、海外の工場で初となる年産5,000トンのLCPポリマープラントを高雄工場に新設します。このプラントは、今後のLCPの躍進を支えるだけでなく環境に優しいプラントにもなっています。

LCPの合成工程では窒素を多く使用します。従来は窒素ガス発生装置を使用していましたが、その際に多量のエネルギーが必要でした。 そこで今回新設するプラントでは、一度使用した窒素を再利用する「窒素循環設備」を新たに導入します。これにより、窒素の使用量を従来の10分の1に抑えることができ、窒素の生成にかかるエネルギーを大きく削減することができます。その結果、LCPプラント全体で約30%の省エネが見込まれており、大幅なCO₂排出量の削減にもつながります。高雄工場のLCPプラント全体で年間約9,000トンのCO₂排出量削減を実現できる見込みです。

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さらにこの新プラントには、VOC(揮発性有機化合物)排出を抑えるための「排ガス燃焼設備」も導入します。製造工程で発生する排ガスを燃焼処理することで、ガス中に含まれる有機化合物を処理し、VOCを削減するものです。これによりVOCの発生をほぼ100%抑えることができ、現地の厳しいVOC排出規制基準にも対応することができます。
当社は今後も、加速するDX社会の発展をエンプラで支えるとともに、環境に配慮したサステナブルなプラントの建設・運営を進めていきます。

窒素循環設備導入までの道のり

一度使用した窒素には、品質に影響を与える副生成物が含まれるため、窒素を再利用するためにはこの副生成物をプロセス中で除去することが重要です。除去が適切になされない場合はプラントの連続運転に支障をきたす恐れもあったため、今回は事前に副生成物の種類や性状、発生量の基礎調査を徹底しました。さらに、数々の実証実験を行うなど検討を重ねることで、ようやく連続稼働が見込める設備として導入できる目途が立ちました。

熱利用の最適化に向けたクアンタン工場での熱ピンチ解析

SDGs 7SDGs 13

当社は省エネの取り組みの一つとして、各工場の複数の蒸留塔間で熱を再利用する「二重効用」という廃熱回収を行ってきました。現在、2030年のGHG削減目標達成に向け、そうした熱利用をより最適化する取り組みを本格的に開始し、グループ全体で更なる省エネにつなげようとしています。
その第一段階として2023年度は、当社グループ会社のクアンタン工場(マレーシア)をモデル工場とし、熱利用の最適化を実現する技術を検討するための「熱ピンチ解析」を行いました。
この解析により、製造工程において「廃熱が発生する箇所」と「更なる熱を必要とする箇所」が特定されるとともに、必要とされる熱量も数値的にミエル化され、効率的な熱交換の組み合わせの洗い出しが可能になります。今回、この解析結果に基づき、省エネに向けた改善アイテムの積み上げも完了しました。改善アイテムの一つには、従来の二重効用では回収できなかった低温の蒸気を、圧縮することで高温にして再利用可能にする「蒸気再圧縮法(VRC)」技術も含まれます。

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こうした新しい技術も導入しながら工場全体の熱利用を最適化できれば、最大6.82万トン/年(約40%)のCO2排出量が削減できるという可能性を見出しています。
今後はその削減の可能性を最大限実現できるよう、具体的な施策の検討を行っていきます。さらに将来的には、今回モデル工場となったクアンタン工場以外の工場でも同様の熱ピンチ解析による熱利用最適化を図り、グループ全体で2030年のGHG削減目標達成に向けた取り組みを展開していく予定です。

熱ピンチ解析 熱ピンチ解析

VOC排出量の削減

SDGs 3

中国では、VOCに関する法規制が一層厳格化しています。当社グループ会社の南通工場では2023年度、重合工程から発生する排気ガスに含まれるVOCを除去するため、これまで1回だったVOC吸収塔を通過させるプロセスを2回に増やすよう配管ルートを変更しました。 また、新規にルートを設定したVOC吸収塔に新たに熱交換器を導入しました。これにより、吸収塔内の温度を45℃から12℃まで低下させ排気ガスの揮発を防ぐことで、ジオキソラン(VOCの一種)の吸収効率を高めることができます。 これらの取り組みの結果、重合工程において約33%のVOC排出量の削減に成功しました。新南通工場(2024年度完成予定)では、排気ガスを適切に処理するために触媒酸化式の設備の導入も予定しています。今後も当社は環境に優しいプラントの運営、設備の導入を進めていきます。

※Volatile Organic Compoundsの略。物常温常圧で大気中に容易に揮発する有機化学物質の総称。

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新たに導入した熱交換機

新システム導入によりエネルギーの効率化を実現

SDGs 7SDGs 13

ロイナ工場(ドイツ)では、グループGHG削減目標の達成に向け、工場のエネルギー利用の効率化を実現しました。
これまでロイナ工場では、高圧高温のドレン水(蒸留水)から発生するフラッシュ蒸気を冷却塔で冷却していたため、ドレン水の熱エネルギーを有効活用できていませんでした。
そこでこの度、高圧高温のドレン水の圧力を調整して低圧蒸気にする新たな設備を導入しました。これによって作られた低圧の蒸気は、他のプロセスでの加熱に利用されています。また余剰熱は、工場内の建物の冷暖房として活用されています。
この取り組みにより、年間1.4MWhの蒸気使用量を削減できるようになり、1アールあたり約130tのCO2排出量削減も期待できます。この省エネの成果はドイツ政府にも高く評価され、補助金を付与されました。
当社は、今後もグループ全体で環境負荷低減に向けた取り組みを進めていきます。

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境モニター会議

毎年6月に富士工場で開催している環境モニター会議では、近隣地域の方々に富士工場の環境への取り組みをご説明し、意見交換を行うとともに、工場内の環境関連設備などを見学いただいています。2023年度は近隣6地区16名の代表の方々に参加していただきました。

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コメント

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工場見学ならびに2022年度の環境報告を通して、環境対策のためにさまざまな取り組みを実施していることを知り安心しました。印象的だったのは、井戸水を有効活用した空調設備です。実際の現場にも案内していただきましたが、とても涼しく、省エネにもつながると聞き驚きました。さらに、工場には製造工程で出る端材の分別箱が多く設置されていて、製品のリサイクルにも積極的に取り組んでいることが伝わってきました。質疑応答の場面では、準備されていた項目以外の内容についても、実際の検査結果とともに詳しく説明を受けたことで不安を解消することができました。これからも、継続して環境への取り組みを行っていただけることを期待しています。

グリーン預金

Polyplastics (Shanghai) Ltd.(上海)では、2024年2月よりグリーン預金の利用を開始しました。
グリーン預金は銀行が提供する定期預金の一種で、企業が預けた資金をESGのうち環境分野、特に再生可能エネルギー分野向けのファイナンスに充当するものです。当社は、本サービスの環境面から持続可能な社会に貢献できる点に賛同し、利用を決定しました。利用開始にあたって銀行からは、当社の預金がグリーン預金として活用されることを証明する記念品も授与されています。
当社は今後もビジネスパートナーと一丸となって、環境と調和する事業の推進に取り組んでいきます。

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大気汚染・水質汚濁の防止

富士工場では大気汚染物質や工場排水による環境汚染を防止するため、以下の項目について常に監視し、法規制を順守しています。

窒素酸化物(NOx)排出量窒素酸化物(NOx)排出量
硫黄酸化物(SOx)排出量硫黄酸化物(SOx)排出量
ばいじん排出量ばいじん排出量
工場出口排水の化学的酸素要求量工場出口排水の化学的酸素要求量